日常生活がうまく送れない人というのは具体的にこうなっている

「日常生活がうまく送れない」と嘆く少数の人には「あるある」なんだろうけど、具体的に何がどうできないのかをうまく説明できる、という人も少数だろう。
 
だからここは一つ、私が出張って書いてみようと思う。
 
私は縁あって文章を書いたり遊んだりして暮らしているが、例えば温泉の事について書け、となった場合、温泉なんか難しくて行けない。だから行った事がない。調べて書くしかないのだけど、まあ、ちょっと近くのスーパー銭湯に行ってみようかな、とも思う。
 
 
 
ちなみに私は「半導体」がなんなのか、最後までわからないまま1200文字を書いた事があるけど、そういうのに良心の呵責を覚えていたら仕事なんかできない。けどまあ、今日は寒いし、ちょっとスーパー銭湯に行ってみた。
 
 
 
そしたらいきなり「スパリゾート○○」とか放送で言ってるじゃん。推敲する際に「スーパー銭湯」を「スパリゾート」に書き換える事も少し考える。
 
 
 
じゃあ日常生活がうまく送れない私について今から説明するね。
 
スパリゾートに行く際に、身体を洗うタオル、フェイスタオル2枚、シャンプー、リンス、ボディソープ、洗顔料、化粧水、乳液、クリームなんかを手提げに入れていたので、ロッカー室に行って服を脱ぐ。もうロッカーの鍵が閉まらない。3箇所ロッカーを変えて「係の人来ないかな、壊れてるロッカー多いよ」と思っていた。
 
けど「下のボタンを押して回す」の注意書きを見つけてホッとする。この鍵をなくしたら5千円かかると書いてある。私は注意深く生きてるから、財布とかケータイをなくした事がない。
 
それでシャンプー、リンス、ボディソープ、身体洗うタオル、フェイスタオルを持って浴室に入る。
 
もうみんなプロなんだよ。私みたいにバラで持ってる人なんかいなくてね、プラスチックのカゴに入れて棚に置いてる。おばあちゃんもそうしてる。それでシャワーのところを見るとシャンプーもリンスもボディソープもあるの。
 
とりあえずバラでそこの隅に置いて露天風呂入る。
 
 
ああ、空気が涼しくてお湯が温かいというのは気持ちがいいんだなあ、と思う。
 
 
私なんかもう立派なおばちゃんなんだけど、もっと立派な獣のようなおばちゃんや溶けた餅のようなおばあちゃんとかがいてしばらくじっとする。おしゃれな植木とか植わってて「これがリゾート部分か」とか思う。
 
 
 
サウナもなんか凝った名前でね、中は薄暗くて入ったら桶いっぱいの塩がある。これはなんだ?と思って座ってくつろいでる人を見ると股の間に塩を貯めて、それを掬って腕なんかに塗ってる。
 
ああ、股に挟んで保管するのかと思っておもむろに中腰になり備え付けの大きいスプーンで股の間に詰める。
 
歩けないじゃん。
 
一応空手やってるからね、足腰にはまあまあ自信があるけど、一歩でも踏み出したら塩が落下、そう思うと中腰で股の間に塩を詰めたまましばらく空気椅子のような事をして考えた。
 
一旦リセットしよう。
 
股の間の塩を手で掬って椅子に移動しようとして「かけ湯をしてください」というのを見つける。しょうがないからもう塩ごとかけ湯する。「私は塩水がかけたかったんです」みたいな落ち着いた顔で。
 
それで改めて左手に塩を盛って椅子に移動する。
 
事なきを得たね。
 
なんだかわからないんだよ。なんでサウナで塩を塗るのか、とか、股に挟んで保管するのか、とか。万事がそんな感じでね。前にスポーツジムでメガネをかけたままサウナに入って「熱っつっ!!!!」ってなったりとか。どっと疲れて早く帰りたいと思って、浴室を出て顔を洗うの忘れてて、洗ってから気づいたけどトイレの手洗うところだった。
 
フラットじゃん?床が地続きというか。バリアフリーって言うのかな、わかんないよ。
 
外に出てマッサージとかあるのに気づく。足裏やってもらおうかなと思ってお願いする。マッサージしてくれてる人にこんなひどい目にあった、おばあちゃんとかプロですよね、と説明したら「お客様面白いですね〜言われませんか?」と言うので「言われますよ、でも私は真面目にやってるんですよ」と言う。続けて「でも思い切ってなんでもやってみる、っていうのはいいですよね」と言うと「遠くからいらしたんですか」と言う。「いえ、自転車で来ました」「ここもう3年前にオープンしたんですよ」笑って「何か忘れたりしてもフロントで貸してくれますし、大丈夫ですよ」と言う。
 
日常生活がうまく送れない人というのは、万事が万事、そんな感じでね、何がどう、とうまく説明できないもんなんだ。
 
少しでもご理解いただけたなら幸い。